【旅行記】Vol. 27 プラハ 7

 最後のお別れにカレル橋に行きました。バスは午前11時にターミナルを出るので、土産物屋の屋台をぶらぶらと見て歩くくらいしか出来ません。橋の通路の両脇に変なお化けのあやつり人形やプラハ城を描いた絵やらクリスタルの小動物やら、いろいろなものが並んでおります。


 
 T氏は、おかしなマリオネットを買うつもりで店員と話したり、遊ばせてもらっております。たいていこういう段階までいくと、慎重な彼でも「購入!」という合図です。しかし、5,000円という値段が彼に涙を飲ませてしまいました。イタリアあたりで同じような仕掛けの人形が2万円くらいだったのを見たT氏は、クラクフに続いて、感性を優先させる買い物がどれだけ自分に有用なものかをちくちくと思い知ったと嘆いておられました(後日、その教訓を大いに生かして感性だけでミニ・クラブマンという車を買ったことは以前に申し上げた通りです)。
 
 
 僕はボヘミアングラスの小さな猫を買いました。当時付き合っていた彼女に一つくらいはと思って買ったものです。何しろ3週間もほったらかしにするわけですから、多少なりとも気の利いたお土産を買わないわけにはいきません。ところが、別れて数年後に再会した時、「なくしちゃったよ」と言われた折、《去る者、日々にうとし》という状態をまざまざと味わった気分でした。
 
 
 Y君は、ちょっとたばこを吸ってくるといってわざわざ橋から降りて、下の広場まで行きました。確か、下の広場には灰皿が設けられた喫煙スペースがあるとのこと。いつの間に調べたのか知りませんが、さすが、模範教師の片鱗を、既に教員になられる数年も前から見せてくれたことになります。一服やって戻ってくると、台湾語か中国語をしゃべる女の子たちのグループが欄干の銅像にもたれかかってたばこを浴びるように吸っておりました。あれを見たY君は、正直者がバカを見る、という悲哀をしみじみと感じたと語っておいででした。
 
 
 またホテルへの帰り道、Y君はかねてから狙っていた飾りを探しだすことが出来ました。その飾りとは、太陽の輝きを彫ったレリーフで、顔がついています。その顔は笑ってないといけないそうですが、楽しそうに笑っている顔は納得がいかないと言ってなかなか探し出せないレアなブツだったようです。その表情ですが、ドラゴンクエストというゲームに出てくるスライムの表情を思い描いてくだされば、いささか合点がいくのではないでしょうか? 笑っているように見えるのですが、決して楽しそうではないという絶妙な顔つきです。それを発見するまで決して妥協しなかったY君に敬意を払いたいと思いますが、それだけの執拗さと熱心さをお仕事にも発揮なさったら、さぞかし高い評価と栄冠を得られることと思います。