昨日の関数に

ついてですが、、、
あ、昨日の関数とはこれです。



これにs=1を代入すると


1+1/2+1/3+1/4+1/5+……


となります。どこまでもどれだけ足していってもこの和はゆっくり増えるだけなのですが、最終的には無限大に膨れ上がっていきます。


ところで、ビンの口に息を吹き込むと音がします。更に強く吹くと1度目の音の倍音に当たる高い音が出ます。演奏家が楽器を奏でると、ちょうどビンの口を吹いた時のように一度に無数の倍音が作り出されますが、楽器によって音色が違うのはこの倍音のせいです(……だそうです)。楽器の物理的特徴によって出来る倍音の組み合わせが変わってくるそうで、例えばクラリネットの場合は基音に加えて分母が奇数の分数……1/3、1/5、1/7……の倍音が生まれます。一方、ヴァイオリンの弦からは、1/2、1/3、1/4……に対応するあらゆる倍音が生まれます。そうです。先に上げたゼータ関数に s=1 を代入した場合と同じです。ヴァイオリンの弦の振動によって出る音が基音とあらゆる倍音を全て加えた無限和になっていることから、数学者たちは数学の世界の同じような無限和に注目し始めたようです。こうしてゼータ関数に s=1 を代入して得られる無限和は調和級数と呼ばれるようになりました。


ところがこのゼータ関数に1より大きな値を代入するともはや無限にはなりません。
例えば s=2ですと


1+1/4+1/9+1/16+……


となります。
これを見たオイラー……スイスの大数学者レオンハルト・オイラー……は、この無限和の答えが無限ではなくある特定の値になると知っていたようですが、それがどんな値なのかを正確に求めることは出来ず、8/5に近いということしか分からなかったそうです。しかしそこはオイラー。数学の白亜の殿堂の表玄関を飾る大数学者です。あれこれこの式をいじり倒すうちに、ついにこの無限和の値を突き止めたのでした。


1+1/4+1/9+1/16+……=1/6π2


だそうです。。。この無限和の値は『πの平方(2乗)を6で割ったもの」だと。


この値の少数展開はてんでめちゃくちゃ……とんでもない行儀の悪さで手のつけようがないのですが、今日に至るまでこの数列が1/6π2に近づくという発見は、数学の中で最も興味深い計算の1つとされているそうです。πとはご存知の通り円周率 3.1415……のことで、オイラーは円積問題に関連させてこの値を導き出したのですが、何ということもない 1+1/4+1/9+1/16……という和と混沌としたπという数に関係があるなど誰一人予想していなかったとのこと。このオイラーの発見は、ゼータ関数によって数学の全く無関係な分野の間の予想外のつながりが明らかになるかも知れないという最初の兆候だったのです。。。


あ、『円積問題』とは「与えられた長さの半径を持つ円に対し、定規とコンパスによる有限回の操作でそれと同じ面積の正方形を作図することができるか」という問題です。円の正方形化とも呼ばれる問題で、これは18世紀に「不可能である」ことが厳密に証明されました。それから『倍音』とは「振動体の発する音のうち、基音の振動数の整数倍の振動数をもつ部分音」のことです。


……などと昨日ブログに上げさせていただいた『素数の音楽』を読み返してみながら、特に手に汗握って読んだ箇所を反芻してみました。


夜が短くなりつつありますねえ。


※参考文献(というよりは……) 『素数の音楽』マーカス・デュ・ソートイ 
                 -「円積問題」に関してはWikipedia