[旅行記【1995年卒業旅行】【旅行記】Vol.25 プラハ 5

 ベルトラムカを出ると同じ道を歩いて、今度はバスです。地下鉄よりは景色を見られる地上の乗り物のほうが街を把握するのに手っ取り早くていいでしょう。目的地で降りるのに苦労するのは先ほど申し上げた通りですが、慣れてしまえばこんなに快適で気持ちのいいものはありません。
 
 
 次はプラハ城の裏手の小径やら教会やらに行こうということになります。Tが言うにはえらく気の利いた裏道があるそうで、それを是非見たいということです。そこは緩いカーブの上り坂の細い枝道です。それからその近くにあるストラホフ修道院の図書館に入ります。中世貴族の贅を尽くした豪華さです。ハシゴ、本棚、本、机、椅子……いろいろありましたが、僕が最も気に入ったのは大きな地球儀です。ドラゴンとかキメラとか描いてありそうなあやしい地球儀です。それと、どういうわけか虫がいっぱい展示してありましたが、これはY君を喜ばせました。彼は虫にはいろいろとうんちくを持っておりまして、傾聴に値する砂金のような知識を持っています。とりわけカメムシについては深い造詣を持っておいでで、広い経験と教養は全く恭敬に値するものがあります。
 

※ストラホフ寺院遠景


 さて、夕食です。あらかじめ目星をつけておいたレストランに出向くことにいたします。カトヴィツェでB氏が勧めてくれたお店で、『ウ・カリハ』というレストランです。有名どころらしく、ガイドブックにも一押しの店だと書いてあります。素晴らしいビールと料理を楽しむためにさっそく地下鉄に乗りました。
 
 
 ところが、『ウ・カリハ』は10時閉店とのこと。今9時55分……退散です。首都の有名レストランがそんな時間にクローズとは早すぎる気もするのですが、仕方ありません。またまた地下鉄に乗って旧市街まで戻り、そこから店探しなのですが、もうそんな気力はありません。兵站が脆弱な我々としてはこれ以上の行軍は出来ないのであります。というわけで、よしここにしようと思って入ったのが、緑のテントが目立つレストランです。中は思いの外広く、明るくて、もう10時半なのにまだ大勢のお客さんがいます。こういう店はたいてい間違いありません。
 
 
 しかし! 油断するととんでもないことになるので注意が必要です。いつも腹を空かせている我々のように調子に乗って注文すると、食事が戦いになってしまうからです。空腹の時に自由に食材や料理を選んではいけません。また、料理が我々の感覚からしてみれば異様に安いということが事態に拍車をかけてしまいます。
 
 
 気合いを入れて食べ過ぎたのに一人700円もしないのは大変満足です。その中にはビール5杯も含まれています。けれども、出された料理は全て食らう、という美しい信条が我々を苦しめ抜くのでした。何にせよ、信条や主義を貫くというのは不器用であり、つらいことです……お腹いっぱい食べているはずなのに空腹でふらふらなような足取りでホテルに戻った我々は、ホテル一階にあるエロバーを覗いてみようという《予定》をキャンセルして、部屋でうなることにいたしました。
 
 
 ちょっと挿入するのを忘れましたが、ヴァーツラフ広場で食べたホットドッグの味を語らずに素通りするのはよくありません。1日目、ナ・プリーコピエ通りと双璧をなすプラハ一の繁華街ヴァーツラフ広場を散策しておりました。もう夕闇が迫っている黄昏時で、我々は夕食をどこで食べるのかを決めなければなりません。無論、着いたばかりの日で勝手が分からない街であります。幾らインフォメで情報を得ようが、鳥取でやるように、既知の店のどれで悩むかというわけにはまいりません。


※ナ・プシーコピエ通り