雪国

masatomo-s2008-03-04


浪人時代に読んだものを久々に去年読み、言葉がなくなりました。


目の覚めるような豪快な描写があると思いきや、吐息さえ聞こえそうな繊細な表現があり、雪の夜の凍てつきが肌に感じられる筆致があったりと、短い作品の中に広がる世界は、自然も、人間模様も、登場人物それぞれの人生も、陰のある美しさに満ちています。そのように描写されています。


空の彼方に浮かぶ枯淡の世界のように書かれているあの温泉宿に漂う雰囲気は何なんでしょう。あの時代にあったものなんでしょうか。それとも、失われつつあるものなんでしょうか……もしかしたら、既にこの世にはないけれど、川端康成氏のペンが甦らせたものなんでしょうか?


と、禅問答みたいなことを言っててもしょうがないですよね。何とかあんな文章を書いてみたいなどと僭越至極なことを考えるのですが、それもかなわぬとあればあの文章をそのまま手帳に書きつけたりしてみました。一万年ぐらい研鑽しても、私の努力の延長線上にあの境地はないと分かっていながら。。。


たまには数学などの本を脇に於いて日本文学の粋に触れてみようと思います。久々に、酔いたいものです。